短編小説「血塗られた城」第二章 城の過去

城の過去

無人と化した町を抜け、いくつもの田園風景を過ぎ、山間の谷を越え、大きな大きなあの屋敷林に再びたどり着いた男、そこで彼は一人の奇妙な男と出くわした。

昨日の今日、さらにここはあの城のすぐ近くだ。

まともな「人間」な訳がない!この男もあの悪夢の中の登場人物の一人に違いない….

しかし、男は警戒しながらも再び人間と出会えた事にどこか安堵していた。

が、その奇妙な男が一歩、また一歩と近づいて来るに連れて彼の心臓は高ぶり始めた。

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短編小説「血塗られらた城」第一章 導かれた男

導かれた男

「ザク ザク ザク」

1993年10月、夕暮れ時のある日、黄金色に染まった空の下、男が1人、大きな大きな屋敷林を歩いていた。

見た目はまだ若く、背は170cmくらいでやや細身、髪はボサボサで長い間手入れをした様子は無かった。

荷物はリュックサック一つ、と言っても男はそれを両肩に背負う訳ではなく「これが俺の流儀さ」とでも言う様に、持ち手を掴み、片方の肩にかけていた。

彼の履いていたブーツはボロボロで底から靴下が見えそうなほど磨り減っていた。

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恐怖の牛丼

牛丼ってたまに食べたくなるよな。

店に食べに行くのも良いが、俺は断然自分で作る派だ。

調味料はみりんと醤油、それに粉末のだしを少々。

柔らかく煮込んだ牛肉に絡みつくあの甘塩っぱいタレがたまらないんだな。

でも俺はもう牛丼を食べる事は二度とないだろう。

なぜかって?

聞いちまったからだよ…牛丼の声を。

昨日の事だ。

俺は久しぶりに牛丼が食べたくなって自分で作ったんだ。

いざ出来上がって食べようとしたらさ、喋りだしたんだよ…牛丼が。

牛丼というより牛かな。

牛丼/牛「どんな気分だ?」

俺「え….何が?」

牛丼/牛「物も言わぬ罪なき生き物を殺して食べるのはどんな気分かって聞いているんだよ」

俺「そんな事言ったって何か食わなきゃ生きていけないだろ」

牛丼/牛「その何かって言うのは俺達じゃなきゃいけないのか?」

俺「…..」

牛丼/牛「お前たち人間は雑食だ。何食ったって生きていけるだろ?」

俺「…..」

牛丼/牛「何とか言えよ人間」

俺は何も言い返す事が出来なかった。

しばらく黙り込んでいると、最後にそいつは言った。

牛丼/牛「いつか、この地球にお前たち人間を捕食する動物が現れる。その時にお前たちは初めて気づくだろう。家畜化され、家族だと思っていた奴らに殺されて食べられる我々の気持ちがな」

その後はもう何も聞こえて来なかったが、俺はとてもじゃないがその牛丼を食べる気にはなれなかった。

というより、怖すぎだろ。

何なんだよ一体。

俺は今後ベジタリアンとして生きていくと共に、いつか現れるという俺たち人間を捕食する動物の事を世に伝えていこうと心に決めた。

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