もくじ
クラリコーンとは
クラリコーンとは主にアイルランドの伝承に登場する妖精の一種である。
酒好きの妖精として有名であり、醸造所や酒場、ワインの貯蔵室などに住み着き、ありったけの酒を飲み干すと言われている。
性格は基本的に陽気で明るく、酒を勝手に飲む以外は特に悪さはしないようだ。
クラリコーンは基本的に酔っぱらった小さなおじさんをイメージすると分かりやすいだろう。
また、クラリコーンはレプラコーンやファー・ダリグなどと近い関係にあると言われており、特にレプラコーンと近い関係にあり、従兄弟または同一種であるとも言われている。
レプラコーンとの関係
先ほどクラリコーンとレプラコーンは従兄弟同士または同一種であると言ったが、これは人によって解釈が様々である。
ある民族学者はクラリコーンとは酒好きのレプラコーンであり、同一種だと言い、またある民俗学者はクラリコーンとレプラコーンは近い関係にあるものの、別の種族であると言う。
個人的にはクラリコーンとレプラコーンは同一種ではなく、従兄弟同士であると思うが、実際はどうなのだろうか。
ちなみに、一説によるとレプラコーンはクラリコーンと間違われる事を非常に嫌うそうだ。
見た目
クラリコーンはアイルランドの民俗学者Thomas Crofton Crokerによって1825年に初めて公式に記述された。
トーマスの記述によると、クラリコーンは身長6インチ(15センチほど)の小男で、しなびたリンゴのような顔をしているらしい。
また、瞳はきらきらしており、鼻は酒を飲みすぎて赤紫色であると言う。
また、赤いナイトキャップを被り、短い皮のエプロンをしているそうだ。
主なストーリー
ここではクラリコーンが登場する最も有名な話を一つ、簡単に紹介する。
ーThe Haunted Cellarー
by Thomas Crofton Croker
ーあるところにジャスティン・マッカースィーという男がいた。
彼はとても裕福な家庭で育ち、立派な屋敷を相続してそこで暮らしていた。
ジャスティンは裕福であったが、とても寛容な男で、しばしばワインを他の者達に勧めた。
また地元では屋敷で働く者達にとても良くする良い主人であると言われていた。
しかし彼には悩みがあった。
それは雇った執事達が皆、長くは続かずに直ぐに辞めてしまう事だった。
というのも、彼が執事にワインを貯蔵室から持って来るように頼むと、いつも、皆ゴーストのように青白い顔をして戻って来て、もう貯蔵室には行きたくないと言うのだった。
なので、彼は毎回、自分でワインを貯蔵室から持って来るしかなかった。
そんなある時、屋敷の馬小屋で働いていたジャックという青年が彼の新しい執事にと名乗りを上げた。
ジャックは自分はこれまでの執事達よりも勇敢であると信じており、何よりも執事になれば給料が上がるので、ワインの貯蔵室に何が潜んでいようと構わないと考えたのだ。
ジャスティンはジャックを試しに執事として雇用すると言って、彼の申し出を受けた。
それからしばらく、ジャックは執事として真面目に働き、全てが順調であった。
ある日、ジャスティンは友人達と狩りに行き、その後に皆を屋敷に招いて一緒に夕食を食べていた。
夜が更けて来ると、ジャスティンはジャックに貯蔵室からワインを持って来るように言った。
ジャックはワインを入れるためのカゴを持ち、階段を下りて貯蔵室に向かった。
貯蔵室の入り口に着くと、何かが割れる音と共に狂ったような笑い声が中から聞こえて来た。
ジャックは「気のせいさ」と声に出してつぶやくと貯蔵室の中へと入っていった。
しかし、奥に進めば進むほどその笑い声は大きくなっていった。
そして、ジャックは何かが割れる音が自分に向かって近づいて来るのを聞いた、それはまるで野生の動物が貯蔵室に紛れ込んで暴れているかのようだった。
恐ろしくなったジャックは急いで貯蔵室を飛び出すと階段を駆け上がり、ジャスティンの元へと戻った。
ジャックのただならぬ様子を見たジャスティンは急いで貯蔵室に向かうと、そこには赤いナイトキャップを被った小さな男がいた。
小さな男が挨拶の代わりにゲップをするとジャスティンは「そこまでだ!」と声を荒げた。
「お前はこれまで私の執事達を皆怖がらせて辞めさせただけでなく、私のワインを飲んで私の寛容さを奪った。もうウンザリだ、私は明日この屋敷を出て行く、そしてお前とはもうおさらばだ!」
すると小さな男はにやにやしながら言った。
「旦那、例えアンタが家を出たとしても俺はアンタとワインを追いかけて行くさ。それに俺は俺達のワインを他の奴等から守ってやってるだけだぜ?おっと、アンタのワインだったな」
ジャスティンは深いため息をついて、ワインを棚から取ると友人達の元へと戻った。
さて、ジャックはその後も執事として働き続けたが、決して貯蔵室には行きたがらなかったので、彼は亡くなるまで自分でクラリコーンが守っている貯蔵室までワインを取りに行かなければならなかったー
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