詩「夕暮れ時の雨とリードのない犬」

俺はさ、90年代生まれなんだけど、俺が物心つく頃にはもう野良犬なんてどこにもいなかったんだ。

それがまさか21世紀の日本の路上で成犬を拾う事になるなんて思いもしなかったねまったく。

まあでも拾っちまったもんは仕方がない。

あれは確か今から14年前、俺が19歳の時だったかな。

当時俺は隣町の倉庫でウォーターサーバーのボトルをトラックに積み込むバイトをしててさ、職場まではバイクで行ってたんだ。

晴れの日はバイクって本当に便利だって思うけど、雨の日は運転の難易度が一気に上がるから大変だよね。

あの日もバイトを終えていつものようにバイクで職場を出ると急に雨が降り出してきたんだ。

俺は「あぁ、この雨の中バイクで帰るのしんどいな」とため息を吐きながら、事故を起こさないように普段よりも慎重にバイクを運転して自宅に向かったんだ。

そんでその道中、あれは職場と自宅の丁度中間くらいにある大きな交差点で信号待ちをしている時だった。

何か黒くて大きいものが歩道を行ったり来たりしているのが視界に入ったんだ。

俺は「あれ、何だろう」って思って顔を歩道の方に向けて見るとそれが犬だって事に直ぐに気が付いた。

「なんだ、犬か」

その時、丁度信号が青に変わったから俺は後続車を困らせないように直ぐに発進したんだけど、交差点を抜けて少しすると何かモヤモヤした変な違和感が急に頭の中に浮かんだんだ。

「あれ、そう言えばあの犬の近くに飼い主いたっけ?」

俺は何か気になる事があると確かめずにはいられない性格だから、直ぐにUターンして交差点に戻ったんだ。

そしたらやっぱりその犬の近くには飼い主らしき人はいなかった。

俺はバイクを路肩に止めてその犬に近づいた。

犬は俺の存在に気が付くと低いうなり声を上げながら俺の周りをゆっくりくるくる回り出した。

それは俺を威嚇したり攻撃しようとしているんじゃなくて、怖いけど離れたくないような…何かを期待しているようなそんな感じだった。

俺なんかそれ見たら泣きそうになっちゃってさ、もう別に噛まれてもいいやって思って地面に両膝を突いてその犬を抱きしめたんだ。

そしたら犬もほっとしたのか、うなるのを止めて尻尾を振りだしたんだよね。

その時犬をよく見てみたら首輪はちゃんと着けていたんだけど、リードは着いていなかった。

「なんだお前、家から逃げて来たのか?」

なんて言いながら俺はその犬を取り合えず自宅まで連れて行く事にしたんだ。

バイクを交差点の近くにあった公園に置いて、名前も知らない犬と一緒にずぶ濡れになりながら自宅に向かって何キロも歩いたんだけど、あれは本当にしんどかったな。

家に着いた俺は犬を風呂に入れて綺麗にすると直ぐに警察に電話して事情を説明したんだけど、それから数日経っても飼い主は見つからなくて結局俺が飼う事になったんだよな。

蓋を開けてみたらとんでもないアホ犬だったけど拾って良かったよ。

もう死んじまって二度と抱きしめてやる事は出来ないんだけどね。

なあ知ってるか?

俺は今でも時々つい癖でコート掛けの下をふと見ちまうんだぜ。

そこで眠ってるお前を見るのが大好きだったから。

 

 

 

 

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