恐怖の牛丼

牛丼ってたまに食べたくなるよな。

店に食べに行くのも良いが、俺は断然自分で作る派だ。

調味料はみりんと醤油、それに粉末のだしを少々。

柔らかく煮込んだ牛肉に絡みつくあの甘塩っぱいタレがたまらないんだな。

でも俺はもう牛丼を食べる事は二度とないだろう。

なぜかって?

聞いちまったからだよ…牛丼の声を。

昨日の事だ。

俺は久しぶりに牛丼が食べたくなって自分で作ったんだ。

いざ出来上がって食べようとしたらさ、喋りだしたんだよ…牛丼が。

牛丼というより牛かな。

牛丼/牛「どんな気分だ?」

俺「え….何が?」

牛丼/牛「物も言わぬ罪なき生き物を殺して食べるのはどんな気分かって聞いているんだよ」

俺「そんな事言ったって何か食わなきゃ生きていけないだろ」

牛丼/牛「その何かって言うのは俺達じゃなきゃいけないのか?」

俺「…..」

牛丼/牛「お前たち人間は雑食だ。何食ったって生きていけるだろ?」

俺「…..」

牛丼/牛「何とか言えよ人間」

俺は何も言い返す事が出来なかった。

しばらく黙り込んでいると、最後にそいつは言った。

牛丼/牛「いつか、この地球にお前たち人間を捕食する動物が現れる。その時にお前たちは初めて気づくだろう。家畜化され、家族だと思っていた奴らに殺されて食べられる我々の気持ちがな」

その後はもう何も聞こえて来なかったが、俺はとてもじゃないがその牛丼を食べる気にはなれなかった。

というより、怖すぎだろ。

何なんだよ一体。

俺は今後ベジタリアンとして生きていくと共に、いつか現れるという俺たち人間を捕食する動物の事を世に伝えていこうと心に決めた。

お知らせ

この話を含む詩集をAmazonの公式ストアで販売中です。

興味のある方は下のリンクから商品ページに行けます↓

https://www.amazon.co.jp/dp/B0DHDC9CW2

関連記事

詩「老猫」

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です