とある国に住むある男はいつものように日常を過ごしていると、急に耳元で誰かが囁くようになった。
最初は気のせいだと思って耳を傾けなかったが、しばらくすると気のせいでは説明が付かないほどにハッキリと耳元で声がするようになった。
その声はしきりに男の耳元で「誰かが落ちるよ、そこから誰かが落ちるよ」と言った。
男は直感的に彼の自宅の窓から見える斜向かいのアパートから誰かが落ちるのだと思った。
それから男は耳元で声がする度に窓から身を乗り出して斜向かいのアパートを監視するようになった。
人の良い彼は事故を未然に防ぐために斜向かいのアパートを監視して誰かが落ちそうになったら助けに行こうと思っていたのだった。
そして遂にその時は訪れた。
「誰かが落ちるよ、今日、誰かがそこから落ちるよ」
誰かが耳元でそう囁くと男は急いで窓から身を乗り出した。
すると勢い余って窓の外に落ちてしまった。
落ちながら男は思った「そうか、あの声は誰かの危機を知らせる天使の声ではなく、俺を陥れようとする悪魔の声だったのか」
男が地面に激突するとまた耳元で誰かが囁いた。
「誰かが落ちるよ、今日、地獄に落ちるよ」
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