皆さんは海や川、プールなどで溺れかけた経験はあるでしょうか?
日本では毎年1000件以上の水難事故が発生しており、行方不明の方も含めて事故発生件数の半数以上の方が亡くなっているそうです。
そして、無事に救助される割合は半分以下と言われています。
事故の発生原因は様々であり、漁師や海女さんのような海で仕事をする方が事故にあってしまう場合もあるし、釣りやダイビング、遊泳などを楽しむ人が事故にあってしまう場合もあるそうです。
結局のところ、事故は未然に防ぐのがベストなのですが、自然が相手だと中々難しい事もありますよね。
明らかに危険だと思われる行為を控えたりする事で事故の発生件数を減らす事は出来るかとは思いますが、若いと危機管理能力に欠けるのか、結構無茶をしてしまいがちですよね。
かく言う私も10代の頃に海で調子に乗って溺れかけた経験があります。
ここではその件についてお話させて頂きます。
あれは私が16歳の夏の事でした。
当時私は神奈川県のとある私立高校に通っていて、友人もそれなりにおりました。
そして、高校に入って最初の夏休みに高校の同級生7人と私、私の地元の友達2人の計10人で湘南の海に遊びに行ったんです。
その日は天気も良く、波も穏やかで正に海水浴日和でした。
最初の内はみんなで砂浜でサッカーしたり、浅瀬でワイワイして楽しんでいたんですけど、2時間もすると私は飽きてしまったので地元の友達の1人に「おい、どっちが遠くまで行けるか勝負だ!」と言って2人で沖の方に向かったんです。
馬鹿ですよね…
水深が腰の辺りまでくるともう歩くのが大変になったので、私と友人は平泳ぎで沖に向かいました。
平泳ぎで30mほど進んだ頃だったでしょうか。
ふと「今どれくらいの深さなんだろうか?」と思って、私は泳ぐのを一旦やめて体を垂直に戻して水深を測ろうとしたんです。
湘南の海は汚れていて濁っているので目視では確認出来ませんでしたからね。
水中に腰を据えて両足を恐る恐る海底へと伸ばすと、辛うじて足がついて安堵したのを覚えています。
でもほっとしたのも束の間でした。
その時すでに水深は顎の付近にまでなっていたので、波が来る度に私は海に全身を飲み込まれました。
私は泳ぐのが得意ではなかったので、もうその時すでに「あ、ちょっとやばいかも」と感じていましたが、私と友人の周辺には浮き輪やゴムボートに乗って遊んでいる方も少数ではありましたがまだ何人かいたので、「まあ、大丈夫か」と思ってさらに沖へと進んだんです。
そこからさらに50mほど沖に向かったところで周辺は無人になり、私と友人はさすがにそれ以上進むのが恐ろしくなって引き返す事にしました。
その時には2人とも結構焦っていたので、帰りは平泳ぎではなくクロールで一気に浜辺へと向かいました。
友人は泳ぐのが得意な奴だったので私との距離はどんどん離れていきました。
私も必死で泳ぎましたが、しばらくしてからある異変に気が付いたんです。
「あれ、俺、全然前に進んでなくね?」
泳いでも泳いでも前に進んでいる気が全くしなくて、試しに一旦泳ぐのを止めて海面にただ浮かんでみたら絶望しました。
「あれ、俺、沖に流されてね?」
そう、私は離岸流に巻き込まれて沖に流されていたんです。
血の気がサーと引いて、頭がビリビリと痺れるようなあの感覚。
あの時の絶望感、恐怖は今でもハッキリと鮮明に覚えてます。
ちなみに、離岸流とは海岸付近に発生する局地的に沖に向かって流れている潮流の事です。
大変危険な潮流ですが、離岸流の幅は10~30mくらいなので、流れに対して水平方向に避難する事で回避出来るそうです。
でも、当時の私は離岸流なんて聞いた事もなかったので、正しい対処法なんて知る由もありませんでした。
そんな私が取った行動は離岸流に巻き込まれた際に最もやってはいけないと言われている「流れに逆らって岸に戻ろうとする」というものでした。
オリンピックの選手であっても離岸流の潮流に逆らって泳ぐ事は難しいそうなので、水泳のド素人の私がどんなに頑張って流れに逆らってみても沖に押し戻されるのは当然の事でした。
そして、あっという間に体力の限界が来てしまい、私はその場でもがく事しか出来なくなっていました。
もう本当に息が苦しくて苦しくて空気を思い切り吸い込もうとするんですけど、私はもうパニック状態でしたから、その時に塩水も一緒に器官に取り込んでしまってまともに呼吸も出来ませんでした。
それはもう本当に地獄の苦しみでしたね。
次第にもがく体力も無くなり、頭がぼーっとして来て、恐怖もあまり感じなくなって来た頃、私はその時生まれて初めて本気で「あ、俺もう死ぬんだ」と思いました。
これ多分同じような経験をした方にしか分からないと思うんですけど、人間っていざとなると結構冷静に「死」を受け入れる事が出来るもんなんですよね。
動物的な感覚というか、本能的なものというか、上手く説明が出来ないんですけど、多分その時は私の脳が死への恐怖を遮断したんだと思います。
私はもはや抵抗する事なく死を受け入れ、うつ伏せのような形で海面にただ浮いていました。
多分実際にそうしていたのは5~10秒くらいだったと思うんですけど、体感的には5~10分ほどにも感じていましたね。
その5~10秒の間に私は自分のそれまでの人生を走馬灯を見るような感じで思い出しており、もうその頃には怖いとか苦しいとかは一切感じていませんでした。
そしていよいよ意識が飛びそうになった時、最期に私の脳裏に浮かんだのは女手一つで私を育ててくれた母の顔でした。
「あ、俺、まだ死ねない」そう思った瞬間、これ本当に漫画みたいな話なんですけど、そう思った瞬間に私の脳が覚醒して体中に力が漲って来たんですよ。
範馬の血に目覚めた刃牙みたいな感じです。
多分原理的にはランナーズハイと同じような感じだと思うのですが、とにかく急に体が元気になったんです。
動けるようになった私が先ず一番最初にした事は大声を上げて友人に助けを求めるというものでした。
一緒に沖に向かった友人との距離はもう既に50mほど離れていましたが、幸いにも私の声は彼の耳に届き、私が溺れかけている事を知らせる事が出来ました。
とは言っても彼もまだギリギリ足が付くか付かないかの位置におり、直ぐに岸に戻って助けを呼ぶという事が出来なかったので、彼もまた大声を上げて助けを呼ぶ事しか出来ませんでした。
私が「助けてくれ!」と彼に叫び、彼が「誰か助けてください!友人が溺れているんです!」と叫んで、まるで伝言ゲームのような感じでしたね。
そうこうしている内に友人の声を聞いた誰かがライフセーバーの方を呼んでくれて私は無事救出されました。
あの時ほど誰かに感謝をして頭を下げた事はありませんでした。
ボートで救出してくれたライフセーバの方達、私のために助けを呼んでくれた友人、ライフセーバーに知らせてくれた方。
しばらくは彼等への感謝の気持ちでいっぱいでした。
ちなみに、私はこの出来事が原因で海洋恐怖症になってしまい、二度と海に近づく事が出来なくなりました。
川やプールはまだ幾分マシなのですが、それでも「もう行きたくない」というのが本音ですね、
と、まあこれが私の「海で溺れかけた話」なのですが、皆さんはどうかお気を付けくださいね。
海での仕事に従事する方はもちろん、観光やレジャーで海に入る事がある方も全員出来る限り注意して頂きたいと思います。
皆様が私のような経験をしない事を心より願っております。
お勧め記事
ハゲ/薄毛に悩む男性に送るエール「ハゲたっていいじゃないか」