ちょっと切ない詩「アスライ」

アスライは数百年に一度、月明りの下で水浴びをする。

それは彼女達にとってとても大切な事なんだ。

なぜなら月の明かりは彼女達になくてはならないものだから。

でも、太陽の光は駄目なんだよね。

太陽の光に当たると彼女達は溶けて水になってしまうんだ。

昔僕が出会ったアスライも太陽の光を浴びて水になってしまった。

とても、とても美しい娘だった。

僕は池で水浴びをする彼女を一目見た瞬間に恋に落ちてしまって、直ぐに駆け寄ってアプローチしたんだよね。

すると彼女も僕を気に入ってくれて、二人で時間を忘れて話をしたんだ。

そう、時間を忘れてね。

気が付くともう夜明け寸前になっており彼女は急にパニックになった。

「もう駄目、今から水に潜っても太陽の光は私に届いてしまう…もう二度とあなたには会えないわ…ごめんなさい」

その時僕は彼女が何をそんなに焦っているのか分からなかったけど、「大丈夫だよ」と言って彼女を抱きしめようとした。

すると彼女は「駄目、私に触れるとあなたは凍傷になってしまう」と悲しそうな声で言った。

僕はもう一度「大丈夫だよ」と言って彼女を抱きしめた。

彼女の肌はまるで氷のように冷たくてさ、彼女が言った通り僕の体は直ぐに凍傷になってしまった。

でも僕は体の痛みなんて気にせず彼女を抱きしめ続けたんだ。

僕の腕の中で彼女は繰り返し繰り返し「ごめんなさい」と泣きながら言った。

僕も泣きながら彼女に「大丈夫だよ」と言い続けた。

そして、最後に彼女は「ありがとう」と僕に言って微笑むと、溶けて池の水と一つになってしまったんだ。

僕はしばらくその場に立ち尽くしていたよ。

それまでの事が全て夢か幻のように感じてしまってね。

でも体に残った凍傷の痛みが彼女が確かにそこにいた事を僕に教えてくれたんだ。

それから僕は月明りの夜には必ずあの池に行って彼女との思い出に浸る事にしているのさ。

だってそうしていれば、またいつか彼女が現れて一緒に話が出来るかも知れないからね。

それにあの池は僕にとって彼女そのものだからそこに行くだけで彼女を感じる事が出来るんだ。

でも、出来ればもう一度、彼女に出会って抱きしめたいな。

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