もくじ
ラナンシーとは
ラナン・シー/リャナン・シーとはアイルランドやスコットランドなどのケルト諸語圏に伝わる妖精の一種である。
leananは「恋人」を表し、sidheは「妖精」を意味する。
英語ではfairy lover「妖精の恋人」と呼ばれる彼女の名前は元々はゲール語のleannanが由来で、意味は「恋人・愛人・愛しい人」などである。
ラナン・シーは狂おしいほど美しい人間の女性の姿をした妖精で、気に入った人間の男性に言い寄り恋人になるという。
特に詩人や芸術家などを好み、彼等の恋人になる事で良作を生みだすためのインスピレーションを与え、アーティストとして大成するのに大いに貢献するらしい。
しかし、ラナン・シーを愛した男はみな最終的には気が狂い、短命に終わってしまうという。
先ず、ラナン・シーの恋人になった男は心も体も時間も全てを彼女に捧げる事を求められる。
その代わりに詩人や芸術家にとって最も重要とも言える、俊作を生みだすのに欠かす事の出来ないインスピレーションを彼女からもらう事が出来るのだが、一度彼女からの恩恵を受けると詩人や芸術家は彼女なしでは作品が作れなくなるという。
そうしてどんどん彼女に依存していき最終的には気が狂って自分を傷つけたりしてしまうらしい。
これが彼女による策略なのかあるいは、詩人や芸術家にありがちな作品作りの苦悩によって精神を病んでしまった結果なのかは分からないが、人間の男にとってラナン・シーは危険な妖精であるとも、恩恵をもたらしてくれる妖精とも言えるだろう。
ラナン・シーはヴァンパイア?
ラナン・シーのこうした(人間の男に言い寄り最終的に破滅または短命に導く)性質から、ラナンシーをヴァンパイアのような妖精またはヴァンパイアであるとする説も幾つかある。
※特にイギリス、マン島のラナン・シーは非情な吸血鬼のような妖精であると描写される事が多い
その場合は通常のヴァンパイアのようにラナン・シーもまた人間の男の血を吸ったりする事もあるとされているが、
こうした説の発端は19世紀のアイルランドの著名な詩人W・B・Yeatsである。
彼はラナン・シーを魔性の女(妖精)と考え、あたかもヴァンパイアであるかのような描写をし、作品を世に広めた。
個人的にはラナン・シーはもっとロマンティックな妖精であると思う。
ちなみにこうした説では、ラナン・シーは自分が気に入った男が自分の愛を受け入れなかった場合は奴隷のように従い、なんとかその男を振り向かせようとすると言われている。
そして男が一度彼女の愛を受け入れると、取り憑き、男を破滅へと導くと言われている。
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